アメリカ人の健康意識を変えたマクガバンレポートとは?!
アメリカ上院栄養問題特別委員会は、1975年に5,000ページにもおよぶ膨大なレポートを発表した。その当時アメリカでは心臓病の死亡率が1位で、がんは2位だったが、心臓病だけでもアメリカの経済はパンクしかねないと言われるほど医療費が増大していた(1977年には1,180億ドル-約25兆円)が、この財政的危機を打開することも医療改革が進められた理由の一つである。
アメリカ政府は、医療改革の一環として上院に「国民栄養問題アメリカ上院特別委員会」を設置し、全世界から選りすぐりの医学・栄養学者を結集して「食事(栄養)と健康・慢性疾患の関係」についての世界的規模の調査・研究が7年間の歳月と数千万ドルの国費を投入して行われ、5,000ページに膨大な報告がなされているが、それを「上院レポート」、または委員長の名前をとって「マクガバンレポート」とも呼んでいる。
破たんが懸念される医療費用の改革を主目的としていたが、調査会の委員長であるマクガバン氏によると、「どれほど巨額の医療費を注ぎこんでも、それで国民が少しでも健康になればいい。しかし事態はまったく逆で、このまま推移すればアメリカの国そのものが病気のため破たんしてしまうだろう」といった悲痛なまでの深刻な事態があったわけである。
そして、その「上院レポート」は「心臓病をはじめとする諸々の慢性病は、肉食中心の誤った食生活がもたらした(食原病)であり、薬では治らない」と決め付け、さらに「われわれはこの事実を率直に認めて、すぐさま食事の内容を改革する必要がある」として、7項目の食事改善の指針を打ち出している。
その内容を要約すると、高カロリー、高脂肪の食品つまり肉、乳製品、卵といった動物性食品を減らし、できるだけ精製しない穀物や野菜、果物、を多く摂るように勧告している。
また、この「上院レポート」を補足する形で発表されたのが「食物・栄養とがん」に関する特別委員会の中間報告だが、そのレポートでとくに注目されるのは「たんぱく質(肉)の摂取量が増えると乳がん、子宮内膜がん、前立腺がん、結腸・直腸がん、膵がん、胃がんなどの発生率が高まる恐れがある」として「これまでの西洋風な食事では脂肪とたんぱく摂取量との相関関係は非常に高いと述べていることだ。
そして、最も理想的な食事は元禄時代以前の日本人の食事であることが明記されているが、元禄時代以前の食事と言うと、結局精白しない穀類を主食とした季節の野菜や海藻や小さな魚介類といった食事内容になる。
このレポートが発表されたとき、アメリカ国内はもちろん、全世界はショックを受けた。こうした背景もあって、欧米では「日本食=健康食」というイメージが広まった。
マクガバンレポートで示した食事改善目標は以下の通りである。
@でんぷん質を現在のカロリーの40%から55〜60%に引き上げなさい。
A脂肪分は現在のカロリーの約40%から30%に減らしなさい。
B動物性脂肪も植物性脂肪も減らすが、それは前者がカロリーの10%、後者が20%になるようにして1対2の割合にしなさい。
Cコレステロールを1日300mgに減らしなさい。
D砂糖消費は40%減らしてカロリーの15%までにしなさい。
E塩の摂取も50〜85%減らし1日3gにしなさい。
この「マクガバンレポート」が、現在でもアメリカの正食運動の源となっているのだ。
1983年に農務省長官の諮問機関として創設された食事ガイドライン委員会は、マクガバン委員会以後の新しい研究を踏まえ、食事改善目標をより実行しやすい形にするという補完作業を続け、その指針の一つに、食べる食品の種類を多くという項目も加えて次のように述べている。
「人間の生存および健康維持のためには40種類以上の栄養素が必要である。つまりいろいろな種類のビタミン、ミネラル、アミノ酸、必須脂肪酸などがそれである。またエネルギー源としての炭水化物、脂肪、タンパク質も必要である。これらの栄養素はバランスのとれた食事によって摂取されるものであり、そのためにはいろいろな種類の食品を食べる必要がある」
いわゆる食品のバランスをとりつつ、多種類にすることが推進されることになった。1985年には日本の厚生省(当時)も「健康づくりのための食生活指針」で1日30品目を盛り込んだ。
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