ネットで誹謗中傷を書く心理
現実の世界で人と親しくなるためには、自己開示が必要です。
自分の名前や年齢、職業などを明かし、また自分も相手の人となりを知ることでお互いの心理的距離を縮めていきます。
ところがインターネットでは、自分が何者かを明かさずに、匿名のままコミュニケーションを取ることが可能です。
そのため、自由な主張や意見交換ができる半面、他者の意見を集中攻撃する「炎上」というトラブルが発生することもあります。
アメリカの心理学者ジンバルドーは実験から、人は相手に自分の正体がばれないとき、抑制力が弱まり攻撃的になるということを突き止めました。
しかも、気に入らない相手に対してはさらに攻撃性を増すようです。
自分がどこの誰かわからない匿名の状態を没個性化といいますが、没個性化の状態だと、大胆なこともためらいなくできてしまいます。
これを没個性化現象といいます。
ネットに誹謗中傷を書き込む人も、実は没個性化現象によるもので、実際はおとなしくてまじめな人ということもあるのです。
過激な書き込みをして炎上を引き起こす人の中には、現実社会では友人がいないという人もいます。
あるいは、自ら生々しい人間関係を避けているのかもしれません。
そのような人でも、やはり誰かとつながっていたいという矛盾した願望があるのです。
普段は他人との会話に入れない人も、ネットの世界では掲示板などに書き込むことで、自分が話題の中心になれます。
また、ネット上ではいくらでも自己演出が可能です。
現実とはまったく違うプロフィールをつくり、なりきることもできます。
自分を脚色し、多くの人が食いつくよう極端な内容を発信することで、本当は注目されたいという欲求を満たしていると考えられます。
参考図書:人間関係の心理学/よくわかる心理学
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