脳卒中を防ぐ5つの習慣とは

脳卒中を防ぐ5つの習慣とは

健康的な食生活などの生活習慣を送ることで、脳卒中のリスクが半減することが新しい研究でわかった。スウェーデンのカロリンスカ研究所のスサンナ・ラーソン氏らが行ったこの研究結果は、神経学の米医学誌「Neurology」に掲載されている。

 

脳卒中のリスクを半減させる有効な生活習慣とは次の5項目であるという。「健康的な食習慣」、「適度の飲酒」、「禁煙」、「運動習慣」、そして「健康体重(体格指数(BMI)が25未満)」である。これらの5項目を満たしている女性は、1つも満たしていない女性に比べ脳卒中のリスクが54%も低いことが分かった。

 

「脳卒中」とは、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、その先の細胞に栄養が届かなくなることによって細胞が死んでしまい脳の神経細胞が障害される病気である。「脳卒中」にはいくつかの種類があるが、大きくは脳の血管が詰まるタイプの「脳梗塞(のうこうそく)」と、脳の血管が破れて出血するタイプの「脳出血」や「くも膜下出血」に分けることができる。

 

米国では、脳梗塞は脳卒中の原因としては最も一般的で、脳卒中全体の80〜85%を占めており、脳出血は、脳卒中全体の15〜20%を占めているという。日本でも近年、食生活の欧米化で以前と比べ脳梗塞の発症例は大きく変化しており、高血圧と関連の強い脳出血が減少する一方で、糖尿病や高脂血症と関連の強い脳梗塞が増加している。

 

日本においては、厚生労働省発表の「人口動態統計の概況」によると、平成25年度では1年間の死因別死亡総数のうち、脳卒中(脳血管疾患)は約12万人である。脳卒中の死亡率は1960年中頃をピークに下降してはいるものの、患者数自体が少なくなったわけではなく、他の病気と異なり一命をとりとめても重篤な後遺症が残ることも少なくないため予防が大切になってくる。

 

今回の研究では、生活習慣と脳卒中リスクとの関係を調べるために、研究開始時に心血管疾患とがんの既往症がない平均60歳の31,696人のスウェーデン人女性が対象とされた。350項目にも及ぶ食生活と生活習慣に関するアンケートを実施し10年以上の追跡調査が行われた。

 

生活習慣として「健康的な食習慣」とは野菜や果物、魚、低脂肪の乳製品など健康的な食品群をどれくらい摂取したかを測定し推奨食品スコアの上位50%を満たすことと定義された。また、「適度な飲酒量」とは1日5〜15g/程度(週3〜9杯程度)とされた。「運動習慣」としてはウォーキングかサイクリングを1日当たり40分以上し加えて週に1回はもっと激しい運動を1時間以上することとした。
「健康体重」においては、体格指数(BMI)が25未満と定義した。また「禁煙」は絶対条件とされている。

 

ほとんどの人が5項目の内、2つか3つだけは健康的な生活習慣を実行していたが、研究対象となった31,696人の内、5項目全ての健康的な生活習慣を実行していた人は、わずか589人しかおらず、1,535人は1つも実行していなかった。

 

平均10.4年の追跡期間中に発生した脳卒中は1,554例であった。内訳として1,155例の脳梗塞、246例の脳出血、残り153例は種類が特定されない脳卒中であった。脳卒中の発症例は、スウェーデン国立患者登録ファイルと死因登録ファイルから同定されている。

 

健康的な食生活や生活習慣である5項目を実行すればするほど、脳卒中のリスクが低下することが分かった。特に脳の血管が詰まる脳梗塞のリスクに大きく影響している。「健康的な食習慣」の人は、そうではない人と比べ脳卒中でも特に脳梗塞のリスクが13%低いことがわかった。また、これらの5項目を全て満たしている女性は、1つも満たしていない女性に比べ脳卒中のリスクが54%も低いことが分かった。なお、今回の研究では脳の血管が破れて出血するタイプの脳出血などの出血性の脳卒中に関しては、5つの健康項目との間に関係性は見られなかったという。

 

これらの結果は、健康的な食生活や生活習慣によって脳卒中のリスク-特に脳梗塞のリスクを大幅に低下させることが可能であることを示している。脳卒中の予防のためにも、今一度、健康的な食生活や生活習慣を見直してみよう。